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ミャンマーでの人材獲得競争について

*当記事は弊社スタッフがMyanmar Express様(http://myanmar-express.com/)に寄稿しているHRコラムを再編集したものです。

 

今回は少し方向性を変え、弊社が先日独自に行った大規模人材アンケート(約2,000名)から見えてきた、今後益々厳しくなる外資系企業同士での人材獲得競争について、一部をお伝えできればと思います。

 

ご存知の通り、ミャンマーでの優秀な人材の採用は年々厳しくなり、給与の上昇もインフレ率と比較して高い割合で推移しています。

弊社には毎月約2,000名の候補者から求人応募が来ており、失業率は決して低くないと思われます。ではなぜ人は余っているのに、採用環境は厳しくなっているのでしょうか。

 

 

下記のグラフは、弊社の登録者4万人への一斉調査で返信があった約2,000名の「現在、外資またはローカル、どちらの企業で働いているか」という質問への回答です。

結果は56%(1,017名)がすでに外資系企業で働いている、という驚くべき内容です。もちろん弊社のデータベースは、ほとんどのお客様が日系を含む外資系企業ですので、外資系企業での就職に興味を持っている求職者がほとんどです。

しかし、現時点ですでにこれだけの割合のミャンマー人が、外資系企業で働いているということは、外資系企業で働くだけの能力を持った優秀な人材の多くはすでに他の外資系企業で働いており、外資の進出が加速するにつれて優秀な人材の獲得競争はより激しくなっていくと言えるでしょう。

 

本アンケートでは、年齢や業種、業界、給与、国別のイメージ調査などをかなり細かく掘り下げ、非常に興味深いデータが上がってきていますが、今回はどれだけ多様な外資が進出しているのか、という点をお伝えできればと思います。

 

下記は「すでに外資系で働いている」と回答した方に、さらに「どこの国の会社か」と質問した結果です。

弊社のお客様は日系が多いということもあり、登録者が現在働く会社の出身国の割合については多少の偏りが出ますが、ここで注目頂きたいのは、非日系外資を合計すると78%あり、予想以上に多くの国々から外資系が進出しているという事実です。

 

さらに30%近くを占める「その他の国」の詳細をみると、いかに多様な国々の外資系が進出してきていることが見て取れます。

 

「その他の国」の回答例:

ドイツ、台湾、香港、UAE、インドネシア、ノルウェー、イスラエル、カンボジア、スリランカ、イラン、ベトナム、ネパール、パキスタン、アイルランド、デンマーク、カタール、オランダ、スイス、イタリア、スウェーデン、ポルトガル、フィリピン、バングラデシュ、カナダ、トルコ、ロシア、レバノン

 

上記のような今後の優秀な人材の獲得が難しくなると推測できるデータが出る一方、それぞれの国とその国の企業へのイメージ調査においては、明確な勝ち組と負け組に分かれ、さらに採用戦略を大きく左右すると思われる傾向が判明しています。

ミャンマー人求職者の日系と外資系に対するイメージ調査の部分に的を絞り、どのような採用戦略が有効なのかを考えていきたいと思います。

 

 

 

下記のグラフは「どの国の企業で働きたいか?」という質問への回答です。

日本(35%)、アメリカ(20%)、シンガポール(15%)と続き、弊社のデータベースに日系で働いている人材が多いことを考慮しても、日系が就職先として非常に人気があることが見て取れます。また、現在アメリカ企業で働いている人数は非常に少ないものの、就職先としては大変人気があることが分かります。日本やアメリカ・シンガポールの企業で働きたい理由として、

①スキルアップ ②給与 ③ワークスタイル ④言語(英語) 

という順で挙げられていました。

 

 

一方、下記のグラフは「どの国の企業で働きたくないか?」という質問への回答です。

中国(37%)、インド(22%)が圧倒的に不人気ですが、韓国(9%)、タイ(7%)、日本(7%)という回答も見逃せません。不人気の理由としては

①言語 ②ワークスタイル ③給与 ④不明確な業務 

と続きます。

 

 

日系はミャンマーの優秀層からは今のところ高い支持を得ています。中国やインドといった不人気な国の企業と比較すると、スキルアップができ、比較的給与が高く、言語(英語)が学べ、業務内容が明確でワークスタイルが合う、というように見られていることが分かります。今後良い人材を継続的に採用していくためには、ミャンマー人の優秀層が重視するこれらのポイントが、社内の制度・文化として整えられているかを確認・改善し、面接の際に分かりやすく説明していくことが求められていると言えます。

 

 

では、回答項目で常に人気トップとなっていた日本、アメリカ、シンガポールに絞って、現在これらの3国の企業で働いている人材について深堀していきたいと思います。

 

下記の図1と図2は、現在日本、アメリカ、シンガポールの企業で働いているミャンマー人のそれぞれ年齢構成と経験年数を表したグラフになります。明らかに日系は新卒・若手を採用する傾向が強く、アメリカ系企業は経験者・中堅・シニアクラスを採用する傾向がハッキリと出ています。シンガポールはちょうど中間に位置しています。

 

 

 

【図1:年齢】

 

【図2:経験年数】

 

図3は給与の比較になりますが、アメリカ系の給与水準は73%が60万チャット以上、80万チャット以上が大半と非常に高く、シンガポール系、日系の順に給与が下がる傾向がハッキリと出ています。これは上記の雇用する人材の年齢・経験年数の違いからくると考えられる一方、「外資の給与は高い」というイメージを裏付けるデータでもあります。今後、日系企業が経験者・中堅・シニアクラスを採用する際にはこれら非日系外資の給与水準を理解した上で人材獲得を進める必要があると言えるでしょう。

 

 

【図3:給与】

 

 

余談にはなりますが、この3カ国で働く人材の男女比をみると、日系は66%が女性と、アメリカ系・シンガポール系と比較して明らかに女性が多い傾向が見て取れます。一つの仮説として、大卒の優秀な男性は海外に出ていく傾向が強いことから、新卒・若手を採用する傾向が強い日系はミャンマー国内に残った優秀な人材を採用しようとすると女性が自然と多くなる、ということが言えるかもしれません。反対に、アメリカ系企業は海外経験がある優秀な中堅・シニアクラスを高い給与で囲い込んでいる可能性が高いとも言えるかもしれません。

 

 

【図4:男女比】

 

 

以上のように、多用な外資系企業が参入してきているミャンマーでは、人材の獲得競争が更に厳しくなることが予想されます。

単なる給与の競争だけでなく、日系としての強みを生かした採用戦略を考える必要が出てくるでしょう。