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就労意識の差から生まれる問題について

*当記事は弊社スタッフがMyanmar Express様(http://myanmar-express.com/)に寄稿しているHRコラムを再編集したものです。

 

 

前回は、入社後の定着率が劇的に向上する「価値観採用」について、弊社の事例を元にお伝えしました。

今回は、ミャンマー人の就労意識の差から生まれるギャップについて、お話したいと思います。

 

日本人の目からみると、「ミャンマー人は簡単に仕事をやめる、短期でやめる」と、どうしても感じてしまうことも多いかと思います。私自身、そのように感じます。一方で、「短期に仕事を辞める」原因については、それぞれ個人的な経験に照らして何となく理解しているという状況ではないでしょうか。

 

この問題を解決するには、日本人とミャンマー人の就労意識の間にある大きなギャップを理解することが不可欠だという思いから、昨年弊社の登録者を対象に大規模な「就労意識に関するアンケート調査」を行い、約2,000名から回答を得ることができました。その結果分かったことは、日本人とミャンマー人の就労意識の差は、日々人材業界にいる私の想像をはるかに超えて大きいものでした。

 

 

■専門家になるには時間がかからない?

下記の質問に対する回答は、就労意識の差の最たるもので、短期での退職に繋がる根本原因の一つと考えられるものです。

 

【質問】入社後、その分野で専門家になるのに、どのくらいの期間がかかりますか?

(After you join a company, how long do you need to become a professional in the field?)

この結果が教えることは、「50%のミャンマー人が、その分野で一人前になるためには半年の経験で十分と考えている」ということです。さらに「15%の人は3ヵ月で一人前になれると考えている」ことになります。衝撃的な結果ですが、このことによって、日本人には中々理解しにくいミャンマー人の行動が、ある程度理解できるものとなるのではないでしょうか。

 

 例えば、数か月で転職を繰り返す。すぐに昇進や昇給を求める。能力に比べてプライドが高い。経験不足なのにできると言う。まだまだ未熟なのに、新しい仕事をしたいと言う。すぐに新しいチャレンジがしたいと言う。これら全ての行動の後ろには「半年程度で目の前の仕事はできるようになる」という意識と、実際の職場での業務に対してもそのような認識があると考えると、ある程度理解できるように思います。

 

では、どうしてこれほど短期間その分野に習熟できると考えるのか、という疑問についても少し考えたいと思います。

あくまで仮説でしかありませんが、生まれ育った環境にいた大人の大半が、短期間の経験のみで、その道に習熟した者として扱われていたのだろうと考えています。自分の町や村の大工、小さな小売店を経営する人、ドライバーなど。恐らく自分の両親も含めて、何年もかけて経験とスキルを積み上げるような働き方をしてきた大人たちと人生で接する機会がほとんどなかったために、「何年もの積み上げが必要」という意識を持ち得なかったのだと考えています。

 

ではどのような施策を打つことで、入社後の定着率が上がるのか、退職率が下がるのでしょうか。

 

 

■転職理由は二つある??

 

まず注意しておきたいポイントとして、転職理由には「表向きの理由」と「本当の理由」の二つあると考えています。

もちろん人それぞれ、ケースバイケースではありますが、社員の方が辞める際には、「本当の理由」はまず伝えてくれないと考えた方がよいでしょう。日本人の我々からすると「ウソをつかれた」と感じることもありますが、ミャンマー人の多くは物事を荒立てたくない、人間関係を壊したくない、といったことを日本人以上に重視する傾向が強く、退職の際に本来とは異なる理由を伝えることに抵抗は少なく、文化的な側面も大きいように思います。

 

上に示した二つのグラフは、左側が「本当の理由」、右側が「表向きの理由」を表しています。左右のグラフを比較すると、明らかに「表向きの理由」では「家族の問題」と「勉学のため」という二つの理由が増加しているのが分かります。一方で「本当の理由」のグラフでは「家族の問題」は、退職理由としては一番低い数値となっていることから、家族の病気や、家族の都合といった理由の場合は、大抵は別の理由があると考えて良いでしょう。また「勉学のため」という理由については、実際の理由となることが多い一方で、伝えるのに都合が悪い理由を隠すことに用いられることも多い理由とも言えます。

 

反対に退職の際に伝えられなかった「本当の理由」としては、ギャップが大きい順に、以下のような理由が並びます。給与や上司との関係、組織体制、会社の仕組みに不満をもって退職する場合には、本当の理由を言わずに退職するということが明確に分かるアンケート結果となっています。

 

1. 給与が低い

2. 上司との関係

3. 組織体制、仕組み

4. 権限がない

5. 同僚との人間関係

6. 業務内容

 

弊社でご紹介した人材が残念ながら退職する場合には、本当の理由の特定と、同じ採用ミスを繰り返さないためにExit Interview(退職面談)を実施しています。この際、お客様から伝え聞いていた退職理由と、退職するミャンマー人が面談の最後にようやく教えてくれる退職理由とでは異なる場合が多く、またその内容は弊社のアンケート結果と一致しています。

 

日本人とは随分と異なる就労感を持つミャンマー人に長期的に働いてもらうためには、ミャンマー人が転職する「本当の理由」や、職場・雇用先に求めるものを理解しながら組織作りを行っていく必要がありますが、我々日本人には中々理解し難いことも多いのが実情です。そのような認識・理解のギャップを埋めるためにも、「ミャンマー人が職場・雇用先に求めるものとは」というトピックについても踏み込んでいきたいと思います。

 

 

■ミャンマー人が職場・雇用先に求めるものとは

下記のグラフは「職場で満足感(幸せ)を感じる瞬間」を訪ねた際の回答結果です。「新しい経験・知識」と「目標達成」の二つが圧倒的な声として出てきています。「同僚とのおしゃべり」や「社員旅行・食事会」といった項目に比べ倍以上の数値となっています。多くの企業様が社員旅行や食事会といった社員満足度の向上施策を実施していますが、この結果から言えることは、それだけでは不十分で「新しい経験・知識」と「目標達成」の二つについて、社員の満足感を向上させることが、長期的な勤務・退職抑止に繋がる、ということになるでしょう。 

行った本アンケート結果を受け、弊社では単なる「経験・知識」や「目標達成」の向上だけではなく「経験・知識が向上しているという実感」、「明確な目標に対して正当に評価されているという実感」の向上を目指し、いくつかの施策を実行しています。手ごたえがあった施策を参考までに共有させて頂きます。

 

・社内勉強会の実施

毎週決まった日の一時間半を、「Dream Job University」と名付けた社内勉強会の時間と定め、その時々で必要と思われるトピックを基礎から教えています。(例:タスク管理、メール管理、キャリアの考え方、マズローの5段階欲求、ロジカル・シンキング、など)

 

・外部研修への参加

入社半年~一年の社員に対して、レベルに分けて外部の専門会社が行う研修に参加させています。「Organizational Behavior」、「Leadership」研修に加え、マネージャーレベルの人材に関しては「ミニMBA」のようなマネジメント人材の育成に繋がる研修に参加させ、目線を上げるように努めています。

 

・外部講師の招へい

社内にミャンマー人の経験豊富なキャリアコンサルタントがいないため、シンガポールの外資系人材会社でトップキャリアコンサルタントを務め、帰国して起業した方を講師に招き、キャリアコンサルタントの知識やノウハウを学ばせています。海外で活躍していたプロから学んでいるということ自体が、大きな満足感に繋がっています。

 

・修了証や資格証の発行

あくまで社内における学びや経験についてではありますが、できるだけ修了証や資格証を発行するようにしています。ミャンマーの方は資格やTestimonialを非常に好むという傾向に加え、自身の学びを実感しやすいということで、非常に効果があると感じています。

 

・達成可能な目標設定と数値化

「目標達成」ということが満足感に繋がるという結果を受け、これまで以上に個人のパフォーマンスを数値化し、月、四半期、半期ごとに目標を設定しています。売上など達成が確実ではない目標についてはあくまで努力指標とし、そこに至るまでの行動量をKPI化し、必ず達成可能な目標とすることを重要視しています。納得感が向上し、言い訳できない環境が生まれていると感じています。

 

・多面評価制度の導入

中々評価が難しく、本人としても納得感が生まれにくい定性的な目標については上司だけではなく、同僚や部下の声を反映した多面評価を導入し、納得感を高めています。まだ、それぞれの項目を6段階で評価することで、マインドセットや行動についても自身の成長を実感できるように努めています。

 

 

上記施策については現在もトライ&エラーを繰り返している最中ではありますが、退職率が劇的に下がり、社員自身の積極性を強く感じるなどある程度の効果を実感しています。弊社は人材紹介会社ではありますが、採用後の定着・成長についてもお役に立てるよう、今後は定期的に自社及び他社様の取り組み・成功事例をお伝えできるような場を設けていきたいと考えています。